2009年6月24日 (水)

石ヤ塔・第1岩峰・後衛峰(2009年6月21日)

石ヤ塔・第1岩峰・後衛峰 クライミング写真 

もう、シーズンも終わりなので、またまた無理をして石ヤ塔へ。

今回は何とか1日半時間が取れたので、前日にここ暫くご無沙汰していた赤倉のIさん宅にお邪魔する。日暮れ前に到着。折り良く来ておられたF会の皆さんと宴会をご一緒させて頂き、夜は皆さんと蛍狩りに出掛けたりして楽しい一夜となった(Iさんご夫妻とF会の皆さんお世話になりました。有難う御座います)

 この度の目標は、いつも1峰頂上に登る度に気に掛かっていた1峰背後(北西側)の岩峰。独立しているちゃんとした岩峰なのは分かっていたものの、規模が小さく見えて今まで手を付けていなかったが、1峰北面の右フェースを見るのも兼ねて探ってみようと取り付いてみた。

 1ルンゼの左股を詰めれば第1岩峰と目標の岩峰のコル辺りに辿り着くのは分かっていたが、それでは1峰北面が探れないし、ガレた急なブッシュを登るのも嫌なので、Dirac seaより取り付き右上することにする。

1P目・・・Dirac sea2P目の左上する折り返し点まで。

2P目・・・ブッシュのコンタクトラインを少し登って右壁に取り付く。抜けた所でビレー。

3P目・・・再度左に回り込むと立派なチムニーが現れるが、泥と苔で取り付き気がしない。右の壁を右から巻いて上部へ。

4P目・・・ブッシュと岩のコンタクトラインを詰めてコルへ。

5P目・・・コルは目標の後衛峰と、第1岩峰の小宴会テラス下辺りより派生した岩稜の末端で形成されたチムニーとなっている。ザイルを引きずりチムニーを潜って反対側に7m程下る。

6P目・・・チムニーを登るのがダイレクトできれいだが、なんとなく疲れていて、容易そうな立ち木横のクラックより取り付く。クラックが切れた所で左に回り込むと双耳峰である後衛峰のコルへ。そこからは頂上までは、両峰共直ぐだった。

 結局第1岩峰北面右側には関心をそそるラインを見出せなかったし、クラック自体

も易しく目新しいものも無かったが、長年気掛かりだった岩峰の頂上に立てて個人には満

足。こんな小さな岩峰に初登頂も無いが、どんなに小さくとも、また容易であろうとも、

全くひと気のない所を探り、勘を働かせて辿り着く頂には登山の本来の喜びがある。

 今回は今まで以上に調子が悪く、またまた相方に迷惑を掛けて何とか林道まで戻る。き

なりの湯でさっと汗を流し、家路を急いだ。

池野・菅()

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2009年5月31日 (日)

石ヤ塔・第1岩峰北面 クべーラ 開拓(2009年5月23日)

 またなんとか時間を作り、Dirac sea4P目のビレー点より見えた、オフィズスから頂上へ直接突き上げるクラックのラインを探しに出掛けた。
 体調がこの所ずっと悪く相方に迷惑を掛けてばかりだが、今回は思い切って登攀具を減らしアプローチが少し楽になった。45分位で岩峰の基部につく。

 4P目まではDirac seaを辿り、小さなレッジにてカム3つを噛ましてビレー。

 5P目・・・4P目まで登ってきたクラックは、ここからオフィズスになる。クラックの奥を覗くと反対側「Stoned」2P目から漏れてくる光が見えて、このクラックが反対側の南面まで続いているのが分かる。出だしの冷蔵庫大の大きな浮石を腫れ物を触るように処理し、被ったオフィズスに入る。私だと厳しそうに思えるサイズだが、リードの相方はヘルメットを脱いで腰に吊るし、キャメロットの♯5♯6を決めて何事も無いように登って行く。壁より大きく飛び出して生えている松の木に跨ってビレー。

 6P目・・・広くなってきたクラックは、ここより大きく草生した凹状になり、大宴会テラスへと続いている模様。ビレー点より左のブッシュの生えたフェースに出て少し登るとクラックの末端が現れる。このクラックを忠実に登って行くと、途中より反対側の「Stoned・陀羅尼」の最終ピッチから漏れ出る光が見え、やはりこれも南面まで続いているのが分かる。登りきった所は、狙い通りぴったり頂上だった。
 池野・菅    菅記

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2009年5月17日 (日)

Dirac sea 完成

2009年5月10日      池野・菅  菅記

今まで手付かずだった第1岩峰北面を登り、先日拓いた大チムニーに繋げて1本のルートを完成すべく、一日だけ休みを遣り繰りして再度石ヤ塔へ出掛けた。

第1岩峰基部を右手より回りこむようにしてその北面へ。壁は下から見るとブッシュどころか大木まで生えており登攀意欲を萎えさせるが、気を取り直して壁の正面右手の段差の所より取り付く。

1P目・・・短いクラックを登り、ブッシュを壁の基部沿いに右上して潅木にてビレー。

2P目・・・正面の壁に顕著なクラックが真直ぐに上に伸び上がっているが、遠望すると上部の岩が大きく浮いた様に見えるのでこれは見送り、更に右上。苔むした短いクラックの所から正面の壁に移り、土の乗った左上バンドを辿って、壁から突き出すように生えた大木にてビレー。

3P目・・・苔の詰まったコーナークラックを苔を落としながら登る。途中潅木、更に小テラスがあり、それを越えてクラックがワイドになった所から左のフェースを登り、大木の生えた大テラスへ。クラックが広くなった辺りより苔や土も少なくなり快適になった。

4P目・・・テラスの木から正面の岩に取付き、そこをマントリングで越えて左のワイドクラックに入る。バックアンドフットの体勢にまで幅が広がった所で左に出、小レッジにてビレー。

5P目・・・ビレー点の直ぐ左横のぽっかりと空いた狭いトンネルの中を潜り抜けると足元がスッパリ切れ落ち、更にその先のリッジを微妙なバランスで回り込んで対面の岩にステミングを掛けると天井が開け、見慣れた大チムニーの中に出た。チムニー内をそのままトラバースし、チムニー基部のビレー点へ。

6P目・・・19日に登ったラインを登り、頂上にて終了。

北面は下から見上げて思ったより快適だった。3P目の半ば辺りよりは泥や苔も気にならない程になり、石ヤ塔独特の立体的な登攀に結構楽しむことが出来た。

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2009年4月26日 (日)

石ヤ塔 第1岩峰・Dirac sea 開拓

石ヤ塔 トポ

2009年4月19日      池野・菅  菅記

  諸事情で2日間の休みを取ることも出来ず、体調も今一で最近はゲレンデに顔を出すのが精一杯だったが、先般「ヒラニア・ガルバ」を登られた紫岳会・S口さんの「大チムニー上部は(南北)どちらに行こうか迷った」とのお言葉に一念発起。今回6年振りにチムニーに入り、宿願を果たすこととなった。

 「扉を開けて」とノーマルルートを繋げ、樹林の中のコンテも含めて4P程で「上の広場」まで。大チムニーまでは、やはり「ヒラニア・ガルバ」の1P目から辿るのがダイレクトできれいだが、少しでも早く取り付きたく、容易なStonedを1P登って大チムニー内部に入った。カムと小潅木にてビレー。

 久しぶりの大チムニーだが、初めて見た時程の威圧感はもう無く、また幾パーティーかが登られ岩も安定したせいか快適に天井下まで。南面と異なりルートが目視できず、この先にビレーポイントが見出せるか不安なため、ここでピッチを切ることにする。最終ピンと苦労して天井のクラックまで行って噛ましたカムを支点にしてハンギングビレー。相方を迎え、ここから新しいラインに入る。苦しい姿勢でのギア選択の後、そのまま池野が出て行く。

当初は右上する天井のクラックを忠実に辿る予定だったが、思いの外狭く苦しそうな上、「キルケゴールチムニー」の如く下向きに開いているため、一旦右上の天井まで行ってキャメロット♯6を噛まし、少し降り気味に右トラバースを掛け、北面のフェースに出て行った。

這い出た北面は少し苔生しているものの、容易なワイドクラックが伸びており、途中被った所を越えると頂上直ぐ横のテラスに出た。少し登って頂上へ。

 初見の折に見て思ったよりも容易で快適だったが、思い続けていたヒラニアガルバ・バジュラに今回のDirac seaの「大チムニー3部作」が完成し、春風とともに満たされた思いに相方共々頂上では和んだ時間を過ごせた。

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2009年3月31日 (火)

幻のカンテ

日時: 2009321

ルート: 伯耆大山 北壁 別山 幻のカンテ

メンバー: Mさん/菅/池野

記録: 池野

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今年も大山のどこかのルートをと思いながら、相方の事情もあって、計画が具体化しないまま、異常なくらいの暑さ続きでシーズンも終りを迎えてしまったように思われた。そしてとうとうこの3連休が最後のチャンス。壁の条件は悪いのは覚悟の上で、相方の長年の懸案である‘幻のカンテ’を登りに行くことに決めた。

私達は、滅多なことでは同人メンバー以外の誰かをホンチャンに、特に厳しいルートにはお誘いすることは無いのだが、ひょんな経緯から、出発直前に勉強会のM先生がご同道戴ける事となった。だがさすがにこの数日は暖かすぎはしないか・・・?誘った方の私達が逃げ腰になっているのに、先生は大丈夫でしょうと力強くおっしゃる。天候が安定する土曜に登攀と決まり、金曜の午後に大阪を発った。

米子道を北上すると、目を疑うほどに黒々とした大山が視界に飛び込んできた。昨年の同時期には北壁の滝沢左稜を、4月に入ってからは南壁・三の沢の正面ルンゼを登っているというのに。‘凍結した時は好ルートとなる’と、日本登山大系に書かれているが、凍結させる水分はすっかり壁から失われていないか?私達が不安を口にしても、それでも先生は泰然としておられる。

翌朝は快晴。堰堤まで来て北壁を仰ぐと別山は真っ黒だ。元谷小屋を出ると頻繁に落石が飛んでくるので一旦尾根に逃げるが、あまりに暑く、次々に衣服を脱ぐ。登山大系のトポの2ピッチ目終了点のコル状を目指し雪壁を登り、ブッシュの生えた泥壁の手前でロープを出す。1ピッチ登ってコルへ。ここから見上げる‘幻のカンテ’は、まさに夏山。壁はバインダーとなる氷どころか水分も枯れ、岩の積み木状態だ。冗談ではなくクライミングシューズを持ってくれば役立っただろう。ビレイ用にペツルのボルトを打ってある小さな岩も含めて、大小さまざまな石が堆積したようなナイフリッジを見ていると、敗退したい気持ちがこみ上げてくる。ところが脆壁のエキスパートである先生は「まぁ任しといて」と言い残し、25m・Ⅳ・A2とある、ボロボロと岩の剥げ落ちるピッチを、何事もないかのように登っていかれる。セカンドは私で、相方に後についてもらう。苦手のアイゼンだが、怖ろしくて落ちられない。次のピッチはトポでは核心となっている。リッジの正面ではなく、やや右手から回りこんで登る。抜け落ちていた軟鋼ハーケンを再度打ち入れ、ワンポイントのA1の後(ルート中、人工はもう一箇所のみ)、フリーとなるが、これだけ脆くても先生は中間プロテクションをほとんど取られない。傾斜の強い箇所に1つボルトが打ってあり、そこを過ぎると傾斜が緩くなるが、そこからがむしろ悪いようだ。確かに上部へ行くほどに岩質が悪く、ロープの動きや手足が触れた程度で落石が頻発する。ナイフリッジの左右の沢は岩雪崩れでも起きたのかと思うほど派手な音が止まなかった。まだまだ心臓に悪い脆いリッジを2ピッチ登りトラバースをして別山バットレスと合流したが、ここへ来てやっと生き返った心地になる。壁の条件は悪かったが、それでも天気が良く風もなく、素手で登れたことは幸いしたと思う。

今回は全面的にM先生に引っ張っていただき、登らせていただくという結果となってしまった。申し訳なく、また有難く、痛み入る次第である。無理を押して山行を企画してくれた相方にも感謝したい。

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2009年2月24日 (火)

陽光の海金剛(楯ヶ崎)

                    H21年28日  池野・菅(記)

 家の諸事情で、年が明けてからはもう泊りがけの遠くには行けない状態だったが、Sさん・Iさんの両御大よりのお誘いがあり、なんとか時間を工面してやはりまた熊野へ。元々皆さんを船石辺りのクライミングとハイキングにご案内する積もりだったが、蓋を開けてみると余りご興味を持たれてなかったご様子。会のK夫妻共々熊野観光に行かれることになったので、我々2人は日曜の半日だけ時間を貰って海金剛へ。

 今回は前回登ったワイドクラックの柱状節理の反対側の、やはり未踏のワイドなクラック(名張のゴジラとモスラみたいな位置関係)。

1P目・・・簡単だがピンの取れないフェースからブッシュに入り、右トラバース。

2P目・・・簡単だが快適なコーナークラックからブッシュバンドを左トラバース。

3P目・・・ここから新しいライン。短いフィストサイズのクラックを登りテラスへ。クラックは硬いが周辺の岩は脆い。

4P目・・・核心。私だと体が入るか入らない位のワイドクラックだが、トップの相方は器用に登って行く。ハーケンも置いて行くのでハラハラしたが、巧く弱点でエイリアンを決め、上部反対側のクラックに回り込んで消えていった。

5P目・・・ブッシュバンドを右に出て、岩とブッシュを登って踏み跡に出て終了。

以上。

ブッシュの多いラインだったが、熊野灘の陽光に照らされ、春のような陽気の中でのんびり楽めた登攀だった。

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2009年1月13日 (火)

2008年最後の彷徨“ムツミヤ山 大長征?”

日時 : 20081228日~29

場所 : 楯ヶ崎 ムツミヤ山南壁/海金剛

メンバー : 菅/池野

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相方が付き合ってくれるというので、一ヶ月前にHさんと訪れたムツミヤ山南壁へ。けれど経緯はちょっとややこしく、実は最初は石ヤ塔へ向かっていた。秋に1ピッチ登った続きの壁をやって、今年をすっきり終らせたい気持ちがあった。けれど林道には雪、下降路にも雪、木々は強風に揺れてすっかり冬の様相…。そこまでのモチベーションを持ち合わせない我々はあっさり楯ヶ崎への転進を決めた。暖かな楯ヶ崎はTシャツ1枚で十分。半袖でもいいくらいだが、今日は藪漕ぎ予定なのでそうはいかない。11月同様、“インプレッション”を懸垂下降し、1ピッチ目、すっきりしたスラブ帯をトラバースする。2ピッチ目、ここから左上ブッシュバンドの始まり。今回は皮手袋もしているせいか、前回手を焼いた棘もなんのその、快調にロープを延ばす。Hさんと登った“デプレッション”の取り付きの先の潅木でピッチを切り、ここで作戦会議。「快調に」とはいえ、回り道してきたのでスタートは12時を回っている。日没までの時間を考えるととにかく急がなければならない。面白いとか面白くないとか言っていられない。南壁の写真を見ると、“デプレッション”取り付きを過ぎて後23ピッチも進めば右上ブッシュバンドに出会い、そこから容易に頂上に抜けられるはずだ。相方も「もちろん一番早いラインで帰ろう」と言う。ブッシュバンドは樹林帯と呼んだ方が適切なくらい広がっていくが、壁との際を進んでいけば、間違うわけはないだろう。3ピッチ目以降はロープを延ばせるだけ延ばして進むが、行けども行けども右上バンドにぶつからない。頭上には弱点のなさそうな柱状摂理が見えるばかりで、躊躇っては左へ進むの繰り返し。いつの間にか対面の海金剛の頂上が真向かいに見える。どうやら行き過ぎたみたいだが、頭の中は疑問符ばかり。海金剛の向こうに隠れようとする太陽と体調不良の相方の様子に、後悔と緊張感が…。そして8ピッチ目、業を煮やして右上するブッシュのラインから小さな岩をステミングで超える。9ピッチ目、樹林の中を行くとあっけなくムツミヤ山の稜線に飛び出した。なんと、いつの間にか南壁を斜めに横断していたわけだ。相方はそこから下降用のFIXロープを回収に戻り、私は荷物をまとめて先に山を下りるが、とんぼ返りで登り返し、相方を迎えに行く。相方が言うには、自分は疲れているから私にロープの回収に行って欲しいが、もし私が道に迷ってしまって、日が落ちてから私を捜索に行くことになったらさらに辛いことになる、だから自分が行ったと。ほんとうに気の毒なことをした…。とにかく日没寸前に二人してハイキング道に出ることができた。

翌日は海金剛へ。さすがにムツミヤ山に連日行く気は起こらない。とりあえず海金剛の対岸の壁に取り付く。ここは前年の12月に登ったラインがあるが、えらく辛口だった。1ピッチ目、前年のラインより左手の緩やかなフェースを登ってコーナークラックの下まで。2ピッチ目、短いがすっきりしたコーナークラックを登り、一段上の汚くて脆そうなフェースから棘だらけのブッシュテラスへ。1ピッチの懸垂とクライムダウンで戻るが、これでお終いとするにはちょっとショボかった。帰りは海岸からザックを担いでコルまで登り返すわけだが、海金剛をクライミングしながら登って帰るという手もある。海岸からははっきり分からないが、壁の上部にフィストサイズくらいのクラックがありそうなので、それ目指して登ることにする。ここも昨年、相方と登った壁だ。その時はブッシュバンドを右トラバースしてHさん達の既成ルートに合流しているが、今日は左トラバースすることになる。1ピッチ目、フェースからブッシュ帯。2ピッチ目、フレーク状の大岩を登り、ブッシュバンドを左上する。3ピッチ目、頭上の露岩を登り、潅木でビレイ。ここまで来ると数メートル先にどう見てもワイドに見えるクラックが確認できる。4ピッチ目、剥がれそうな薄いフレークから左のクラックを辿ってワイドのあるテラスへ。足下にキャメロット#3二つでビレイ。次に登らねばならないのは、手持ちのギアはキャメロット#4が最大なのに、#6も利くのかどうかというワイド。わずか数m、ノープロでも我慢できる…いや見事にフォールするかも?試しにリハーサルしてみると1mくらいでヤバイ感がこみ上げてきて、そそくさとずり下りる。ここまで来て申し訳ないけれど、下にいる相方にクライミングダウンすると告げると、相方は、私のいるクラックの付け根までビレイ点を上げて、もう一度やってみてダメなら一緒に下りようと提案してくれた。相方が合流して、ビレイヤーが傍にいると思うと気持ちが変わるものだ。5ピッチ目、相方に全てのギアを預け、チョークバッグひとつで空身で登り出すと、怖いというより清々しいまでの気分。クライミングはこうでなくては。柱状摂理の岩柱が剥がれて立って形成されているこのクラック、反対側はさらに広くて長いようだ。途中から半身ががっちり入り、安定して登りきることができた。後は木登りをして樹林帯へ。やはり歩くよりも登って帰るのは楽しかった。

3日目は熊野の知人宅で朝から飲んで食べて、今年の山行は無事終了した。

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秋の収穫

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この秋は岩に出かけた数も少ない上、いま一つテンションも上がらず、思ったようには登れなかった。

 20年以上も前から憧れ続けた某岩峰。揃わぬメンバー・悪天・交通機関の不具合・同手配不能やべら棒に高額な運賃等々で、今まで幾度も計画をしては流れていたが、今回はついに念願かなってベストメンバーでその喉元まで歩み寄ったが・・・。やはり状態悪く涙を呑んだ。全ての条件を満たして又出掛けて行き、そして登ることが出来る可能性はとてもとても小さいものだろう。

 もう一つも随分以前から想っていた頚城の壁。条件取り揃い取り付いた。思っていた通りのワイルドさに思った以上の岩質の良さ。だが、私の読みの浅さで最後の詰めを詰め切れなかった。若い頃に比べ、体力・スピードそして何より気力が著しく低下しているのがまだ分かっていない。

 あとは石ヤ塔と仙人峰。どちらもクライミング的には見るものは無かった。だが前者は誰も居ない山中を気ままに彷徨出来たことに、後者は見知らぬ町を歩き、又見知らぬクライマーの利害を超えた親切さに出会えたことで結構楽しい気分を味わえた。厳しい登攀よりその辺りにも喜びを感じるようになって来ているのは、進歩なのか堕落なのかはよく分からない。まあ、その原因が歳のせいであるのは間違いないことだが。

                             菅

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2008年12月19日 (金)

楯ヶ崎彷徨 楯ヶ崎・ムツミヤ山南壁 2008年11月29日~30日

楯ヶ崎・ムツミヤ山南壁

20081129日~30

Hさん 池野

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昨年12月、HさんSさんに誘われて楯ヶ崎・海金剛を訪れたその折に、向かいのムツミヤ山南壁に数ピッチのマルチルートがあると話に聞いた。今年2月に再び海金剛を登り、稜線上からムツミヤ山を実際に見た。柱状摂理が林立する大きな壁の中程を、ちょうど上手い具合にブッシュの左上バンドが走っている。ここを辿り気に入った柱状摂理に出会ったところで上を目指せば、自由気ままなクライミングが楽しめそうだ。今年も秋のほんちゃんシーズンが終りを迎えた頃、Hさんからお誘いがあった。暖かな楯ヶ崎はこれからが本番だ。今回は残念ながら相方の都合がつかず、Hさんと二人での出発となった。

ムツミヤ山南壁は20年以上昔に登られてはいるが記録はなく、どのラインかは判然としない。もう一度海金剛から偵察したほうがいいのではないか?取り付きへの懸垂下降地点も確認するに越したことはない。そんな話をしながらの楯ヶ崎到着は土曜の午前4時。仮眠を取った後、とりあえずギアをザックに詰めて、まずは海金剛を目指す。稜線上から双眼鏡で覗いたところ、柱状摂理は数あれど、閉じていたり、開いていても出口に巨大な浮石がのっかっていたり、それそのものが危なげだったり、クライミングの対象となるものは限られていそうだ。いくつかのラインを検討した結果、初見の壁の偵察の意味合いも兼ねて、ブッシュバンドの入り口に近い、短い柱状摂理とブッシュをつなぐラインが候補に挙がった。気がつくと早くも正午だ。登攀は明日ということにして、続いて南壁の下降地点を捜しに行く。一旦ムツミヤ山の稜線に上がり、南壁側の海めがけて樹林帯を降りていく。下降点は南壁の端っこにある“インプレッション”という美しい2ピッチのクラックルートの延長上にあるが、Sさんは初見で迷う事もなく見つけたそうだ。私には超能力とも思えるその能力はどうしてそれを必要とする全ての人に備わらないのだろう?昨晩の疲れもあるので本日はこれで終了とし、名物のさんま寿しとさんまの一夜干しを買い求め、早い夕食をとってぐっすり寝た。

翌朝は早起きしていよいよムツミヤ山南壁へ。下降点に不要なものを残置して、インプレッションのラインを見学しながら50mの懸垂下降をする。取り付きでさぁ開始!となった時、Hさんが突然「大事なものを忘れた!」見ると背後に手を回している。「チョークバッグ?」「一番大事なもの…クツ。」なるほど履いているのはアプローチシューズだ。でも、「簡単だろうしオレはフォローするからアンタがオールリードして。」と言われたのにはびびった。確かにこれから登ろうとするのは一番容易に見えるラインだが、岩の状態も分からない、何があるか分からない初見の壁だ。クライミング能力は遥かに上であるHさんには是非クツを履いてもらわねば。空中に垂れ下がるロープを横目で見ながら、空身だったらすぐですよとかなんとか言って、取りに戻ってもらった。Hさん、お疲れ様です。

池野先行、以後ツルベでクライミング開始。1ピッチ目は少し登って広いバンド状を左へ。ここの突き当たりは難しすぎて行き詰まり、戻って仕切り直し。2ピッチ目は右上した後、一段上のスラブ帯を左トラバース。名張でご一緒するHさんは“パッシブ大好き”のイメージだが、その人がいきなり槌音を響かせてハーケンを打っている!3ピッチ目、ブッシュバンドの始まり。楽勝と思いきや、鋭いトゲトゲが行く手を阻む。小枝を一本一本へし折りながら、人ひとり通れるくらいの穴を開けて、四つん這いになって進む。最初の柱状摂理に出会って一旦休止。目標のクラックは次の柱状摂理の裏側のようだが、そこまでにはさらなるイバラの群生が待ち構えている。既に戦意は喪失気味。ブッシュを漕いで裏手のクラックを登っても、この真上の岩を登っても、結局上部で合流するんじゃないか・・・?ここからでは様子は分からないが、「なんとか行けると思う」という言葉とともにHさんが行く。この4ピッチ目は摂理が閉じていて結構難しく、ハーケンのAOになったり、抜け口付近に大きな浮石があったりでシブかった。クツを取りに帰ってもらってほんとに良かったことだ。5ピッチ目はハンドからワイドのコーナークラック。溜まっている土を掻き出す他は特に問題ない快適なピッチだ。これを抜け、大木のテラスを過ぎた後、凹状に大きな浮石がいくつか堆積した場所に来た。ここまでランナウトして来ているので、岩も自分も落せない。側壁を使ってバックアンドフットで登り岩に触れないようにするが、抜け口の木を掴む為にはどうしても少々触らざるを得ない。前回の石ャ塔と比べれば全然マシと判断し、ちょびっと踏んでみた。動かなかった。…乗ってみた。木を掴んで無事終了!実は今回自分がリードしたうち、ここが一番印象に残った。安定した綺麗なクラックと比べればクソのようなパートなのだが、あのゾクゾクする、息を詰めるような感覚、クライミング以外でまだ味わうことが出来ないあの感覚、それが私を惹きつけるのだろうか??

樹林と露岩が混ざる6ピッチ目。樹林の奥から「クライミングしているからビレイ頼む。」とHさんの声がする。フォローでは気楽に足を置いた大岩があったがこれまた危険な浮石で、Hさんは下にいる私を気遣って、指一本触れずに登りきったそうだ。ほんとにありがとうございます。それにしても最後までシブいラインだった。安定したところでロープを解いて歩き出すと、ほどなく下降点への目印が見つかった。デポを回収し、ハイキング道に下り立って無事を祝って握手する。

前日、汚くて簡単なルートと汚くて困難なルートのどっちがまし?という話をしていて、後者は登る価値なしと言っていたHさんだが、今日はまさしく汚くてけっこう難しいルートだった。インプレッションに対してデプレッションと名づけたほどだから、Hさんにはガッカリだったと思う。でも初見の残置もない壁を登ったことそのものは楽しかったと言われてホッとする。汚い・きつい・怖いはまだいいけど、面白くなかったでは残念すぎるから。このラインは誰にもお奨めできないけれど、私にも十分楽しかった。この続きをやるにしてもまずはブッシュバンドの道普請からだねと話しながら長い帰途についた。

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2008年11月17日 (月)

秋の彷徨(2008年11月1~2日)

菅・池野

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10月も後半に入ると新潟の天気は崩れてくる。11月はじめの連休は最後のチャンスと考えていたが、連日傘マークが並んでいるので早々に諦めた。天候の安定している地元関西の岩場探しと目標を切り替え、すっかりお馴染みになった熊野方面を目指す。

今回の目的は、昨年、独りで藪をうろついているうちに「見つけた」と思った美しいクラック群を再度確認すること。幻を見たのかもしれず、自信がないのでガチャは持たず、ロープとユマールくらいで偵察に出る。相方と私の能力差はいろいろあるのだが、最たるものの一つがルートファインディング能力だ。その私が相方の先に立ち道案内するのだから、今日はなんか妙な気分だ。

幾つかの岩の基部を過ぎ、藪を漕いで、あのクラック群と対面・・・しばし沈黙・・・。傍らの相方にどう声をかけていいものか、モゴモゴと言い訳がましい言葉を口にしたかもしれないが、記憶が定かではない。一体、美しいストレートクラックはどこに消えたやら、ルンゼを挟んで私が対峙しているのは、藪に包まれた脆そうで短い数本の岩の割れ目。「俺はここで待っているから、お前下りて見て来い。」そう言われて我に返る。ロープをフィックスして懸垂し、ルンゼを渡ってまた藪を登る。取り付きらしき所まで来て見上げると、ブッシュ越しに意外と美しいラインが確認でき、やや気を取り直して相方の元へ戻る。本来ここでもっと丹念に偵察すべきだったのだが・・・

翌朝、ガチャを担いでアプローチ。上部はワイドなのでデカキャメを持っていかねばならない。荷物が重いのでなるべく登り過ぎないようなアプローチを取る。途中、適当な所をトラバースすると首尾よく昨日のルンゼを渡った地点の少し下に出たのだが、この水の流れるルンゼそのものがロープも要りそうなので、やはり藪の中を登って懸垂する。ようやく取り付きに近づき、見上げるクラックは「おっ、いいやん」。そこそこ弱点があり、泥も詰っていない。いざロープを結んで取り付きの藪をかき分けると・・・昨日見ておけばよかったものを、スタート部分には大きな浮石が幾つも乗っかっている。あまりに悪そうなので凹角の右のクラックを登り、途中からテンショントラバースで移って浮石をパスするが、この上にも巨大な浮石が。ノープロで絶対に落ちない・石も落さない自信があれば、数メートル我慢できれば、そこそこ弱点がある綺麗なクラックまで到達できそうなのだが、浮石は私の頭の真上に鎮座している。ここまで来て哀しい限りだがクライムダウンした。

まだ時間があるのでせめて何かくらい登ろうと、昨日検討をつけていた綺麗なクラックを登る。この辺りの大抵の岩に言えることだが、すっきりしたクラックの上部が見え、下部はブッシュに隠れているが素晴らしくスケールのあるクラックだろうと意気込んで行ってみると、やっぱり藪から上だけだった・・・ばかりなのだが、今日みたいに時間が中途半端な時はかえって好都合。「お前なら10分で登れるやろ」と相方が言う。それは言いすぎとしても、これまたワイドだが弱点もあり、簡単に登れそうな気がする。「キャメ#6は置いていくわ」と応じて取り付くが、クラックの中間部まで登り、中から生えているブッシュを鷲掴みにして#5を入れてみると、すぐ上は#6サイズに広がっている。上げてもらった#6と一緒に登るも途中でカサが開き出し、足の下にバイバイだ。最後はヘルメットをバリバリいわせて強引に体を突っ込み、抜け出て終了。落ちなくてよかった!侮って思いのほか苦労したが、変化もあり周囲の環境もよく、楽しいルートだった。

この二日間歩き回って、期待したような対象は見つけられなかった。それでも期待を込めて彷徨うことのなんて楽しいことか!当たりは滅多に出なくても、ハズレ続きでも、それをすっ飛ばしたらクライミングも味気ないものになってしまう気がする。これからも贅沢を言わず、コツコツと探していこう。こんな徘徊に付き合ってくれた相方に感謝。願わくはあと一人二人でもこんな友達が増えますよう・・・ 

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