隠岐・西ノ島・国賀海岸 その1・摩天崖
5月3~6日 池野・菅
昨年末、海金剛に行った折、熟達のアルパインクライマーSさんと「未踏或は手垢にまみれていないルート」の話で盛り上がった。以前から気掛かり(狙ってる?)ルートではSさんは大峰の大氷柱(年が明けてMさんが初登された)などを、私が海上岩峰なんかを上げたりしたが双方共通に話が出たのは隠岐の摩天崖だった。
この壁は日本一の海蝕崖ということで、最高高距が257m。日本の本ちゃんの壁としては大きくは無いが決して見劣りのするサイズではない。ただその余りに脆い岩質の為、40年程昔の広島山の会・森さん達が初登されたのちは、30年前に山学同志会OBの川村さん達が2登された(同ルートかどうかは不明)のみで3登は未だ出ていない模様。私の近い所ではM会の故Sさんが、200m程の所で雨の為敗退した話を知人から聞いた。
ともあれ、私なんかからすると殆ど「伝説の人」しか触ったことのない壁と言うことで、知人達は楽しいゴールデンウィークの山行に出て行かれる中、我々は悲痛な面持ちで大阪を出発した。目標は正面壁の新ルート開拓。Sさんは直近の話だったのでご都合が付かず、我々2人だけ。資料は以前から色々探していたが、結局広島山の会のRさんにお手を煩わせて手配して頂いた41年前の会報「ブナ林」の記録のみだった。
3日・上陸・偵察
昼過ぎに西ノ島に到着。直ぐに観光船に乗り、海上より岩場の偵察。
4日・2ルンゼ下降~1ルンゼ中退~2ルンゼ登り直し
摩天崖頂上の駐車場に車を止め、初登攀者達が下降に使ったと言う2ルンゼに向かう。下降路までは馬や牛が草を食んでいるきれいな草原で、ヨーロッパの、とりわけドロミテのアプローチを彷彿とさせる。ただこちらは悪そうなルンゼを下って取り付きに至るのが大きな違い。のっけから牛(?)の頭蓋骨が埋もれている陰鬱なルンゼを懸垂とクライミングダウンで海まで。下から見上げる正面壁は悪絶。初登の折は300本のハーケンを用意し2日の試登の後、2ビバークで抜けたとのことだが、我々は2日の予定が明日の悪天で今日一日のみになってしまい、頭から正面は難しそう。仕方なく、見劣りはするが傾斜が緩そうでブッシュの多い右のショルダーリッジとも言うべきリッジに目標を変更。リッジの末端部分は脆い被った壁なので、右手の1ルンゼ側から回り込むべく1ルンゼを詰める。途中から傾斜も強くなりザイルを出すが、壁全体が浮いたような岩質の上、リッジの右フランケに弱点が見出せず、ルンゼの真ん中位まで来た所で敗退を決める。重いガチャ(我々はハーケンは30本位だが)にうんざりしながら、2ルンゼをまた登り直す。
5日・雨で停滞
6日・天上界の岩峰
帰りのフェリーの時間まで観光を、と国賀海岸の東の端の通称「天上界」にやって来ると、目前に大きな岩峰が。ルートを目で追うがそれ程難しそうに思えない。早速用意をし、若干の渡渉を交えて岩峰の根元へ。海面より15m程登った所のテラスよりザイルを出す。
1P目・容易だが脆い壁の凹状を直上し、テラスへ。ボルトを打つが岩質が悪いので頼りない。土壁にウォードホッグを、拡張するクラックにチャンネルを打ちビレー。
2P目・目前の白い被り気味のフェースを更に登った所のテラスでビレー。そこまで登るとこれまたボロボロのクラックにチャンネル、土壁に先端数センチしか入っていないウォードホッグの2本でビレーしている。恐ろしいので更に数本アンカーを打ち足すが頼りないない。次のピッチに登りだす所で大きな落があり意気消沈した上、フェリーの時間も迫って来たので残念ながらこれも敗退。支点が不安なので懸垂も出来ず、クライミングダウンした。
つづく
菅記
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